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今林動物病院


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九死に一生特集

最近、生死をさまよいどうにか九死に一生を得たワンコが立て続きに来院し、無事回復に向かっているので、快気祝いも兼ねてご報告します。

症例1 マルチーズ メス 9歳 リボンちゃん

来院時は意識が無く横たわった状態でした。体温を測ると34.5℃・・・死に向かい行く低体温です。飼主さんによると、今日から急に血便をして痙攣したとのこと。病院でも血便を排泄したので検査してみると・・・犬の伝染病で最も怖いといわれているパルボウイルスに感染していました。ご存知の方も多いでしょうが、パルボは別名コロリ病といわれるほど甚急な経過をたどります。数日以内の致死率が非常に高いのが特徴です。

当院では、伝染病の患者さんは入院させないため(院内感染の可能性が非常に高いため)、飼主さんに看護の仕方を指導し、朝晩通院してもらうことになりました。点滴もせず、免疫療法と体の破壊を防ぐ特殊な薬による注射治療をスタートしました。かなり弱っていたので今日中になくなる可能性が高いと辛い宣告もしていたのですが・・・

夕方にはすこし頭をあげ、意識が戻り、次の日には・・・

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この笑顔が戻りました!その後は驚異的な回復をみせ、今はすっかり元気です。

症例2 雑種 メス ポポちゃん  15歳 

ポポちゃんは以前も子宮疾患で危ない状態だったのですが、老齢とフィラリアもちであるという手術リスクの高さから、注射治療でどうにか挽回した経歴をもつワンコです。

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今回の初診時です。横たわり、動けません。エコーで確認するとまた子宮に膿が貯留しています。白血球は正常の5倍程度もあります。完全な子宮蓄膿症です。

しかし、この子も簡単にはへこたれませんでした。徹底的な抗生物質治療と、皮下補液で数日後にはこの通り・・・
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暴れるので3人がかりで注射です・・・(やはり手術は無理なので継続治療中です)

そして最後の症例は、私たちも今までに経験したことのない酷さででした・・・

症例3 マルチーズ ムツちゃん メス 4~5才

いつものようにかかりつけのトリミングルームに出して、迎えにいったらこの状態だったそうです。全身に皮下出血班が無数にあります。ぐったりとして元気もありません。

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いつもピンク色のお腹も・・・

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背中にも・・・耳や足先にいたるまでほぼ全身に同じような出血班がありました。

今まで凝固不全の経歴もないし、家を出るときは正常だったそうですから、トリミング中に何かが起こったとしか考えられません。そこでは全くとりあってもらえなかったということなので、原因を追究するより、とりあえずはムツちゃんを救うことが先決です。

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出血性ショックに対する治療と、止血剤、レーザー治療を行いました。

途中、下血があったり、呼吸が荒くなったりと何度か危ない場面もありましたが、4日目の今日、なんとか皮下の出血も引き、いつもの元気が出てきました。

さて、ここまで読まれた方はお気づきでしょうか?

この3頭、いづれも生きるか死ぬかの重症だったのですが、入院も点滴もしてないのです。

普通、いわゆる一般的な治療では、こういった場合、有無を言わさず入院させ、点滴の管をつなぐでしょう。当院であえてそれをしないわけは・・・

入院はよほどの場合(飼主が看護できない、家での看護では絶対的に無理な病気)を除いてはさせません。この子たちのように、生死の境にいる場合は、動物の場合、入院させると更なる不安から悪いほうに傾く場合が多いのです。ギリギリならば、なるべく家で看るのがいいのです。

そして、当たり前のようにおこなわれる点滴・・・入院患者はとりあえず皆点滴という病院も普通です。この点滴ですが、要は水分を入れているだけのこと。もちろん、同時に薬剤を投与できるなどのメリットもありますが、極端に弱って心肺機能が低下している動物にバンバン点滴を行うと、心臓がダウンしたり肺水腫になってそれが死因になることさえあるのです。加えて、管をつながれ、身動きも出来ず不安な状態での入院を強いることになります。

飼主さんはつい人間の感覚で、入院して点滴してもらえたら、ちゃんとした医療をしてもらっているようで安心するのですが、人間と動物では入院の捉え方が天と地ほど違うのです。

飼主さんと離れ、知らない場所で不安でいるよりは、慣れたおうちで大好きな飼主さんと、家で闘病するほうを動物は望みます。(治療効果にも歴然とした差が出てきます)たとえ、病気でなくなることになったとしても、病院のケージよりは、おうちのほうが幸せなのです・・・

今回はすこし真面目な話になりましたが、大変なときこそお家が大事!このことをしっかり頭の片隅に置いておいてくださいね。
by imabayashi-ah | 2005-10-08 01:01 | 症例